はじめに:プログラミング言語を学ぶ前に知っておきたいこと
プログラミングを学び始めると「どの言語を勉強すればいいのか?」という話題が必ず出てきます。しかし、本質的にはどの言語を選んでも、学ぶべき基礎構造は同じです。
プログラミング言語は、コンピュータに命令を伝える記述のための言語であり、その多くは手続き型プログラミング(Procedural Programming)の考え方を土台にしています。
したがって、最初に学ぶべきは「どの言語か」ではなく、どういう構造でコンピュータに処理を命令するかです。
すべての言語の基礎にある「手続き型」
手続き型プログラミングは、コンピュータの処理を「手順(procedure)」として順番に記述する考え方です。現代の主要言語(PowerShell, C#, Python, Go, JavaScript, Java など)も、内部では命令の順序・条件分岐・繰り返しで動作しています。
- 順序:上から下へ手順どおりに実行する
- 分岐:条件によって実行する手順を切り替える
- 反復:ある手順を必要回数だけ繰り返す
言語がOOP(オブジェクト指向)や関数型を名乗っていても、最下層では手続き型の仕組みで動いていることを理解しておくと、言語を横断して学ぶときに迷いません。
OOPは手続き型の延長線上にある
オブジェクト指向(OOP)は、複雑なシステムを扱うために生まれた設計思想です。クラス、継承、カプセル化などの概念は、規模の大きいプログラムを整理するための道具であり、小規模なプログラムやスクリプトには必ずしも必要ではありません。
OOPは「複雑さに対処するための方法」であって、「書くための基本」ではない。
最初は無理に学ぶ必要はありません。まずは手続き型でシンプルな構造を作る練習をし、なぜOOPが必要になるのかが自然に分かる段階で学ぶのが理想です。シンプルに作れるなら、それが最もコストの低い解です。
関数型・DSL・特殊言語の位置づけ
関数型プログラミングやDSL(ドメイン特化言語)は、特定の目的に最適化された専門的な設計思想です。
- 関数型:データ変換・並列処理・状態管理の抑制に強い
- DSL:SQLやビルドスクリプト、テンプレート言語など特化領域で高い生産性
どちらも強力ですが、汎用的な言語理解とは別の方向性の知識です。基礎としてはあくまで手続き型を中心に学び、必要に応じて専門分野の言語を学ぶスタンスが、学習効率・転用性の両面で合理的です。
LLM(大規模言語モデル)と手続き型言語の相性
ChatGPTのようなLLMが普及し、AIがコードを生成する時代になりました。興味深いことに、LLMと最も相性が良いのは手続き型言語です。理由は、手続き型コードは構文が明快で、手順を順序立てて説明するという性質が自然言語の運用と近いからです。
- 「順序・条件・繰り返し」はLLMが扱いやすいパターン
- OOPの抽象構造よりも、直線的な命令文構造のほうが意図誤差が少ない
- 手続き型の素養があると、LLMに具体的・検証しやすい指示を出せる
LLMはコードを生成できますが、そのコードが正しいか検証は人間の仕事です。それも多分間違いがないが念のため確認するではなく、全く動かないコードが生成される可能性が普通にあり得るので、欠かすこことのできない工程になります。
もし、人間が理解できないような高度で複雑なコードを生成されても人間が検証ができないので、構造がシンプルで理解しやすい手続き型プログラミングでコード生成をするほうが、AIによるコード生成のプログラミングに向いています。
まとめ:シンプルな構造を理解することがすべての出発点
プログラミング言語を学ぶ目的は、複雑な設計を先に覚えることではなく、コンピュータを正確に動かす仕組みを理解することです。その第一歩が手続き型の構造を学ぶこと。
変数・条件分岐・ループ・関数。この4つを確実に習得すれば、どの言語に進んでも応用が利きます。
シンプルに考えるほど、プログラミングは楽になる。複雑さを必要としない設計こそ、最も強い設計と考えられます。
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